複数ペア分散は本当に有効か: 6,461バスケット検証
結論
固定ロットで共通制約がない場合、バスケットP&Lは各ペアP&Lの単純和なので、相関はP&Lを動かせない。6,461バスケットの検証では、収益を増やす選別軸として低相関を使う根拠は確認できなかった。実務上のペア数はN=3〜4で頭打ちになり、結果を大きく左右したのは相関より想定レンジ幅だった。
今日の疑問
検証条件
- 対象
- 6,461バスケット
- 価格期間
- 2026-01-05〜07-03
- ペア数
- N=1〜13
- 資金条件
- 100万円資金・未約定新規注文5%拘束を含む計算
P&Lの恒等式
各ペアの損益を P_i(t) とすると、固定ロット・共通制約なしのバスケットは次になる。
P_basket(t) = Σ_i P_i(t)
監査の独立計算で、6,461組の浮動小数点和の最大誤差は約5.82×10^-11円だった。相関が変えるのは、含み損のタイミングやドローダウンの形であり、単体損益の合計そのものではない。
低相関を選ぶと有利か
低相関組{USD/JPY, EUR/GBP, AUD/NZD}と高相関組{AUD/JPY, NZD/JPY, CAD/JPY}の直接比較では、低相関組+444円、高相関組+23,664円だった。6,461組全数でも低相関10%と高相関10%のP&L差は3,305円、置換p=0.139、95%区間は[−117,177円, +123,741円]だった。
含み損については、日次終値で両方とも含み損の日は平均79.86%、最悪時点では平均98.35%だった。収益率相関が含み損相関の分散を説明した割合はR²=0.1009で、含み損相関自体の窓間安定性も分析定義に依存した。
「低相関なら最大DDが浅い」という便益は、監査で偏スピアマン−0.28〜−0.33、独立再計算−0.30という方向が残ったが、多重比較後の生存者の可能性があり未証明扱いとした。
ペア数Nとレンジ幅
N=1から13に増やしても、中央値の収益増加は2.6%だった。一方、最良と最悪の差は169.6倍から1.16倍まで縮んだ。つまり、ペア数を増やす主な効果は「ペア選びのくじ」を薄めることだった。実務上の頭打ちはN=3〜4とした。
想定レンジRは結果を大きく変えた。±5%(実質レバレッジ13.2倍)ではN=3でようやくロスカット率0%、±10%(4.8倍)ではN=1でもロスカット率0%だった。GMOの未約定新規注文5%拘束を含めると、100万円資金での1ペア上限は±5%で約656,000円、±10%で約241,000円、±20%で約79,000円となる。
これは業者仕様・サイズ規約を含む計算であり、一般的な安全水準ではない。2024-08型の共通ショックは検証期間に含まれず、テール耐性は未検証である。
救済機構の限界
14ペア・130日で、累積確定益を除いた反実仮想は130日中49日が維持率100%割れ、実際の最小維持率は139.0%だった。ただし開始日を2026-06-01に変えると最小救済率は1.1478倍になり、1倍未満のペアも出た。含み損が最も悪化した5日間のカバー率は8.13%、悪化レグ数と日次確定益の相関は−0.3859だった。
確定益による救済は、ゆっくり進む局面では観測されたが、急トレンド時には構造的に間に合いにくい。救済を資金設計の前提にしない。
訂正と限界
監査では、理想化した必要資金式が未約定注文5%を除外していた点、全コスト後としたP&Lがbid/ask履歴・注文失効を再現していなかった点、2024年テールデータを同じ供給データから再現できない点を訂正した。P&Lの絶対値ではなく、恒等式と検証条件を優先して読む。
実査日・出典・免責
実査日: 2026-08-12。出典: source_reports/multipair_trap_2026-08-12.md、source_reports/multipair_trap_audit_codex_2026-08-12.md。監査の確度区分と訂正記録を本文に残した。
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